偽装結婚いたします!~旦那様はイジワル御曹司~

さすがに俺が女より男が好きだなんて、心底信じるわけがないだろう。
全ては冗談なのだから。
ちょっとした笑い話として女子社員たちの昼休みの話題にのぼる程度だ。

俺は飲みに誘っても断る男、というイメージを植え付けられたらそれでいい。


「柳原さん、美味いモツ鍋屋があるんですけど、食べに行きません?」


もうすぐ仕事が終わるという時間にそう声をかけてくるのは、後輩の兼古。
今の俺にフランクにこうして誘ってくるのは兼古くらいのもんだ。

転勤してきた俺は、しばらくは転校生のようにアウェイ感があったが。
兼古のおかげで早く馴染むことができたように思う。

仕方ない。今日は可愛い後輩くんにモツ鍋を奢ってやろう。



「俺と付き合いませんか?」


モツ鍋も美味いし、ビールも美味い。

なのに目の前の後輩がニコリと笑っていきなりそんなセリフを俺に放った。
意味がわからん。一体何の冗談だ。

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