偽装結婚いたします!~旦那様はイジワル御曹司~
居ても立っても居られなかった。
放ってなどおけるか。
宝石を扱ってる知り合いがいるという兼古に頼み倒し、婚約指輪を大至急で用意してもらった。
そして俺は、人生で最大の賭けに出た。
何もかもすっ飛ばして。
俺は柴本にいきなりプロポーズしたのだ。
柴本にとったら、俺はただの同僚だ。
男として眼中にないことはわかってる。
だけどアイツを止めるにはこの方法しか思いつかなかった。
ある意味俺だって柴本に追い詰められての行動だ。
ゆっくり距離を詰めて…なんて思ってて、5年前は失敗したじゃないか。
悠長に構えてたらまた機会を失う。
「俺は35。お前は33だ。もう早々チャンスなんて来ないぞ?」
我ながらひどい文言だ。
プロポーズしているとは思えない言い草だ。
そんな脅迫めいた俺の言葉に、柴本は呆然として押し黙った。
だけど俺は引かない。ひるまない。
引けばこの話はこれで終わりだ。
事前に用意しておいた婚姻届の封筒を、半ば強引に柴本に差し向ける。