偽装結婚いたします!~旦那様はイジワル御曹司~
「ほんとに式も披露宴もやらないんですか?」
「…ん?」
「ほら、前にお母様にそう言ってたから…」
会社帰りに外で食事を楽しんでると、ふと美衣子がそんな話題を口にした。
そうか。俺は確かにそう言ったな。
美衣子にとっては乗り気じゃない結婚なんだから、式や披露宴なんかしたくないだろうと思って。
ある意味俺なりに気を回したんだ。
美衣子の精神的負担を軽減するために。
「美衣子はしたいか?」
「結婚するなら…ドレスくらいは着たいです。一生に一度しか着ないと思うから…」
そうだな。俺の考えが及ばなかった。
女ならウエディングドレスを着たいという夢があるだろう。
美衣子のその夢を叶えるのは俺にしかできないことだ。
「じゃあ、式だけあげようか。披露宴は母親が鬱陶しいからやめよう…」
「でも…披露宴もやらないと、柳原家は元公家で元伯爵家だから…」
「そんなことどーーでもいい」
何が元公家だ、元伯爵だ。
今のご時世、それが何の役に立つ?