偽装結婚いたします!~旦那様はイジワル御曹司~
「あのね、知香ちゃん、」
「柴本、ちょっといいか?」
私が知香ちゃんにそのイベントにはやっぱり行けないって言おうとした瞬間、話の腰を折るように後ろから声がかかった。
こっちに来い、と私を呼ぶ男はもちろん、柳原 響介。
柔和な笑みなんか携えちゃって。
今は会社用の顔だな、コノヤロー。
「まだもらってないんだけど?」
事務所の外の通路奥まで移動したところで、柳原さんが私に右の手のひらを差し出す。
「何ですか?」
「何ってお前……婚姻届!」
そんな直接的な言葉をはっきりと言わないでもらいたい。
誰かに万が一聞かれたどうするんだ。
「自分のとこ書いて、俺に渡せって言ったろ?
渡してから2日も経ってるのに音沙汰無しとはどういうことだ?」
「私、お受けするとは言ってません!」