偽装結婚いたします!~旦那様はイジワル御曹司~
「もうそろそろいいかな…」
ショッピングモール内を歩きながら、兼古くんが私の肩から手をゆっくりと放す。
「びっくりしましたよ。
柴本さんぽい人いるなーって思って見てたら、男と揉めてるし」
「兼古くん、ごめんね」
「あれは何です? ストーカー?」
「ううん。元カレ」
苦笑いでそう答えると、兼古くんもなんとも言えない微妙な苦笑いを返してくれた。
「3年ぶりに会ったの。驚いた」
「すみません。俺、勝手に恋人のフリなんかしちゃって」
「ううん。ほんとに助かったよ。ありがとう」
兼古くんがたまたま私を見つけて助けに入ってくれなかったら、どうなっていただろう。
あのままどこかの居酒屋にでも連れて行かれてたかもしれない。
それくらい先ほどの茂人は強引だった。
「俺、女の子とは恋人同士になったことないから、芝居だったけどさっきは新鮮でした」