偽装結婚いたします!~旦那様はイジワル御曹司~

「普通に恋愛して結婚する見通しがつかなくて。
だけどこの先の人生、ずっと一人でいるのが嫌で。
どこかで一人で孤独死するのが怖くて。
そんな風に思ってるとき、柳原さんがこの話を持ってきた。
柳原さんと結婚すれば、人知れず孤独死する老後は免れると思ったの…」

「孤独死って…」

「切実な問題だよ。
パートナーも子どももいなくて、一人で生きていくってことは、そういうこと」


私が真顔で言ったせいか、兼古くんは約束通り引いたり笑ったりせずにちゃんと受け止めて聞いてくれた。


「自分の老後をネガティブに考えすぎてるって思ったでしょ」


どうせ私はネガティブですよ、と口を尖らせると、兼古くんの口元が緩んで笑顔が見えて。
ちょっと場の空気が柔らかくなった。
兼古くん、いい子だな。


「みんな同じです。先の人生どうなるかわからないですよ。俺だって」


そうだよね。
幸せ街道まっしぐらで生きていくと思ってた晴美だって、その人生が今から大きく変わろうとしている。

何が起こるかなんてわからない。

兼古くんも。
ゲイならではの悩みもきっとあるんだろう。

人はみんな、時に悩んだり迷ったり心配になったりしながら生きていくものだ。

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