偽装結婚いたします!~旦那様はイジワル御曹司~
「じゃあ、柳原さんやめて俺と結婚しません?」
よくわからない幻聴が聞こえてきて。
テーブルから目の前の兼古くんに視線を移した。
「柴本さんは誰と結婚してもいいわけですよね?
家族になって、死に水を取ってくれる人なら」
「…え?!」
「考えてみたら、俺も老後に孤独死するかもしれないし。
柳原さんで不足があるなら、俺とすればいいじゃないですか、結婚」
兼古くんがこんな冗談を言う人だとは思わなかった。
顔が若干笑ってる。
ということは、冗談で言ってるに違いない。
「簡単に言わないでよ、結婚だなんて!」
「柳原さんだって同じじゃないんですか?
二人はこれまで付き合ってなかったわけでしょ?」
「そ……そうだけど」
確かに。
柳原さんだっていきなりプロポーズしてきた。
以前は埼玉支店で同僚だったし、知らない人ではなかったけれど。
いつも仕事の話をするだけの関係だったのに…。
今の兼古くんと何が違うんだ?と問われれば、返答に困る。