願いが叶ったその時…






「士苑、無事でよかった…
 私と一緒にいてあの男に何かされてないか
 心配だったの」



士「…あの男とは、もう縁を切ったよ
  百合を守るために」



「…それがどういうことがわかっているの?
 あの男と縁を切ったとして私を守る?
 裏の世界に足を踏み入れるというの?」



士「俺は、」



「貴方は私の弟…ずっと忘れ、思い出せず
 責任を貴方に押し付けてきた。
 それでも、貴方はまだこちら側には
 来ていない…
 自らすすんで裏の世界に来る事なんてない」





私は自分からこの世界に踏み込んだ
誰にも負けない技術がほしくて
生き抜く理由がほしくて…
そして、それを教えてもらった…

だけど、士苑は違う
私なんかのせいで罪悪感を持つ事なんてない
そんな誤った考えで一度きりの人生を
闇の中で過ごす事なんてない




「士苑…貴方は貴方の好きなように
 いきればいい…
 私なんかのせいで貴方の人生が台無しに
 なってしまう」



士「だったらっ…俺は姉さんの傍にいる!」




「士苑?」




士苑が私のことを『姉さん』と呼んだのは
ここまできて初めてだった。
今まではずっと名前だったのに…




士「姉さんが望むなら俺は何だってする
  盾にでも刃にもなる。
  いらなくなったらほっておいてくれて
  構わない…
  でも、それまでは…
  俺は姉さんの手足になる」




どうしてそこまでして…
私にはそんな価値なんてない
理解できないよ




椿「いいんじゃないの百合ちゃん」



「椿さん、」





今まで黙っていた椿さんが話にはいり
士苑の肩に手をおいた。




椿「君がこれから夏風と生きていく中で
  必要なのは心の許せる仲間だ。
  そんな中でもこいつは役に立つ。
  俺達が不在の間はこいつを頼ればいい」 






 
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