願いが叶ったその時…







夏「だったら俺の傍にいろ…絶対離れるな」



頬に触れてきた夏風の手は震えていた。
らしくもなく泣きそうな顔をして
零王と言われている貴方が
1人の女なんかのために…



「草薙組の若頭がそんな情けない顔しちゃ
 駄目って言いたいけど…
 ごめん…貴方のそんな表情をみれるのが
 私だけだって考えてしまうと
 嬉しくなる(ニコ」



私はたぶんそのとき
はじめて自分から夏風の背中に
腕を回したと思った。



「もう逃げない…
 夏風が私を守ってくれたように
 私も貴方を守ってみせる…
 だから、もう一度私に、
 チャンスをくれる?」



夏「…そうだな…お前になら、
  守られるのも悪くない」



私が過去に身につけてきたすべて…
貴方には言えないことだけど
きっと貴方は知っている…
それを私から言うのはまだできないけれど
貴方にもしものことがあったら…その時は…





夏「百合、外にお前の弟が待ってる」



「士苑が?」



夏「話すか?」



「…話させてくれる?
 夏風達を呼んでくれたのは士苑でしょ?
 お礼ぐらいは言いたいから(ニコ」




夏風は不機嫌になりながらも
椿さんに呼んでこいといって
私の横に座り首に顔を埋めてきた。



「くすぐったいよ」



夏「おちつく」




なんで簡単な返事を返してくるんだ…
放れてくれる気はないらしいな…


諦めていた私の耳に
ドアの開けられる音が聞こえ
夏風から視線をずらし病室のドアを見ると
申し訳無さそうに立っている士苑がいた。





 
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