忘れたはずの恋
「いー感じ!」

プレビュー画面を見ながら相馬課長はニヤニヤしていた。

「中々撮れないよね、こんなの」

私は恥ずかしくて見られないわ…。

「帰ったらスマホに送っとくよ」

「…いや、別にいいです」

本当に恥ずかしい。

あの後、チームの皆さんからも冷やかしの声が上がるし、観客からもいっぱい写真撮られて。

あちこちのSNSに流出するんじゃないだろうか…

「…藤野の事、嫌いですか?」

吉田総括の、少しトーンダウンした声に顔を上げた。

変に気を使わせてしまったのかなって…思って。

「嫌い?」

真剣な目で私を捉える。

「…嫌いじゃないです。
でも、あまりにも年下で、周りが騒げば騒ぐほど大人が子供を虐めているみたいで。
大切なレースの前に疲れるような事を避けたかったのです」

真剣な目をしていた吉田総括の表情が緩んだ。

「そうか…だから藤野は…」

「課長ー!」

吉田総括が何かを言い掛けたのにそれを遮ったのは集配の若い子達。

「おお、皆、来てたんだ」

吉田総括はその子達の相手をし始めた。

…何を言おうとしていたのかな?



レースのスタートは結局、集配の団体で観る事になった。

相馬課長お勧めの2コーナースタンド席。

若い子達は楽しそうに騒いでいる。

「藤野は第2ライダーだからスタートから約1時間後に走るけど、スタートを見てからちょっと藤野の所に行こう。
さっきは騒ぎすぎてちゃんと声を掛けてないし」

相馬課長が吉田総括に言う。

「そうですね。
藤野の格好いい姿もきっと見られますしね」

吉田総括はチラッと私を見て微笑んだ。



…意味深ですね、その微笑み。
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