忘れたはずの恋
「ただ、吉永さん。
まだ独身ですけれどね、藤野よりずっと年上ですよ。
どちらかというと私の年齢に近い」
確か、6~7歳しか吉永さんと僕は違わない。
「…年齢なんて関係ありません」
その透き通った目。
全てのものを貫いてしまいそうな、その鋭い目。
「ふふっ」
僕が笑うから藤野は怪訝な顔をしている。
「十数年前、私もそんな事を言った事をふと思い出したんです」
藤野は首を傾げる。
「妻は私より10歳年上です。
まあ、藤野とよく似た感じで私もね、妻の事を好きになったんですよ」
キラキラと輝く目が丸くなった。
本当に、まだまだ子供ですね。
「どういう風にアプローチしたんですか?」
今の藤野はまるで尻尾を嬉しそうに振る飼い犬のようですよ。
「ひたすら好きだという気持ちを伝えました」
…最初は嫌がられていましたけれどね。
「もっと教えてください!」
…はい?
「いや、教えると言っても何も教える事なんてないですよ」
僕は首を横に振る。
「え〜!?」
頬を膨らませながら僕を見るのは…やっぱり子供だわ。
「…また機会があれば」
丁度その時。
吉永さんが僕宛の書類を持ってきた。
藤野も大人しくなって吉永さんの動きをじっと見つめている。
「吉田総括、総務部長から内線くださいって伝言があります」
そう言いながら吉永さんは僕に書類を渡す。
「はい。ありがとうございます」
吉永さんは僕に微笑んでスタスタと次の場所に歩いていった。
「…いいなあ〜」
僕は恨み節の入った藤野を見つめる。
そんな羨ましそうな顔をしないでください。
「もうすぐ異動してきます。
同じ部になると会話をする機会もありますよ」
そう藤野に言うと僕は目の前の受話器を取った。
内線を掛けながら藤野を見ると、トボトボと自分の班へ戻っていった。
手の掛かる奴だなあ…
まだ独身ですけれどね、藤野よりずっと年上ですよ。
どちらかというと私の年齢に近い」
確か、6~7歳しか吉永さんと僕は違わない。
「…年齢なんて関係ありません」
その透き通った目。
全てのものを貫いてしまいそうな、その鋭い目。
「ふふっ」
僕が笑うから藤野は怪訝な顔をしている。
「十数年前、私もそんな事を言った事をふと思い出したんです」
藤野は首を傾げる。
「妻は私より10歳年上です。
まあ、藤野とよく似た感じで私もね、妻の事を好きになったんですよ」
キラキラと輝く目が丸くなった。
本当に、まだまだ子供ですね。
「どういう風にアプローチしたんですか?」
今の藤野はまるで尻尾を嬉しそうに振る飼い犬のようですよ。
「ひたすら好きだという気持ちを伝えました」
…最初は嫌がられていましたけれどね。
「もっと教えてください!」
…はい?
「いや、教えると言っても何も教える事なんてないですよ」
僕は首を横に振る。
「え〜!?」
頬を膨らませながら僕を見るのは…やっぱり子供だわ。
「…また機会があれば」
丁度その時。
吉永さんが僕宛の書類を持ってきた。
藤野も大人しくなって吉永さんの動きをじっと見つめている。
「吉田総括、総務部長から内線くださいって伝言があります」
そう言いながら吉永さんは僕に書類を渡す。
「はい。ありがとうございます」
吉永さんは僕に微笑んでスタスタと次の場所に歩いていった。
「…いいなあ〜」
僕は恨み節の入った藤野を見つめる。
そんな羨ましそうな顔をしないでください。
「もうすぐ異動してきます。
同じ部になると会話をする機会もありますよ」
そう藤野に言うと僕は目の前の受話器を取った。
内線を掛けながら藤野を見ると、トボトボと自分の班へ戻っていった。
手の掛かる奴だなあ…