柊くんは私のことが好きらしい

同じ学年。同じクラス。友達の友達。一応接点はあったから、話す機会は何度かあった。クラスメイトとして仲良くやれていた。でも柊くんの人柄がそうさせるのであって、特別期待を抱くようなことじゃなかった。


……白状すると、ちょっぴり浮かれていた。


ウソ。何を期待してるの思い込みにも程があるでしょ現実見なさいよ私のバカ!って自分を罵るくらいには浮かれていた。


だって、信じられる?


クラスメイトの半数がフルネームを当てられるかさえ際どい私が、全校生徒に名前が知れ渡っていると言っても過言じゃない柊くんと普通に話したり、連絡先まで交換するなんてさ。


信じられないでしょ。ありえないでしょ。


16年間生きてきた中でもっとも注目を集めたのが、生まれた瞬間くらいの私だもん。浮かれもするさ!


だから、勘違いだけはしないように、って。いろんなことに理由づけした。


偶然近くに居合わせたときにしか言われなかった「おはよう」と「ばいばい」が、いつからか毎日言われるようになったのは、席替えをして席が近くなったからだって思った。


ちょくちょく話すようになってから連絡先を交換しようって言われたのは、クラスメイトの一員として認識された流れだと思った。


ノート写させてって頼まれるようになったのは、声の大きい咲が何度も私の字が綺麗で見やすいって言ってくれるのが聞こえていたからだと思った。
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