柊くんは私のことが好きらしい
「ひまり聞いてー」
「うあ、はいっ」
背筋を伸ばす、緊張しまくりの私と違い、柊くんはいたって通常通りの笑みを浮かべる。
「今さ、もうすぐ学園祭だよなーって話してたんだけど」
「う、うん」
それっぽい単語が聞こえたから知ってる。けっして耳をそばだてていたわけじゃなく。
「福嗣(ふくし)のやつ、イケメンカフェだろとか言い出してきかねーの」
そうそう。ふっくんの声が大きいからね、私にまで聞こえたの。
なんとか平静を取り繕い、へらりと笑う。せっかく話しかけてくれたのに、すぐ会話終了、なんてことになったら不甲斐なさで寝込む。
「じゃあ、あれだ。柊くんが稼ぎ頭で、主役だね」
「俺ぇ? 嫌だよ。コケたら恥ずかしいし、」
その場にしゃがみ込んだ柊くんは私の机に両肘を置き、重ねた手の甲に顎を乗せる。
「絶対卒業までネタにされるじゃん」
そう言ってちらりと私を見遣った視線は、机へ落とされた。
息が止まってしまいそうになる。この場にとどまってくれたのが嬉しくて、いつも通りでいなくちゃって思うのに、こそばゆくて言葉がうまく出てこない。
「コケないよー。だって、その、……」
「……ネタ決定か」
うわあああ違うのに! 絶対成功するのに! 何詰まってんの私のバカ、バカ!!