柊くんは私のことが好きらしい

「皆さんようこそいらっしゃいました! 進行役を務めますのは、俺! 恋の伝道師ことフクシンシでーっす!」

「命名のセンス……」


咲は冷めているけれど、くすくす笑われているのはふっくんの人望だろう。本当に紳士かどうかは置いといて。


「初めての方もいると思うんで、まずはご説明しましょう。さあ御覧ください! この荒波を!」


何度見ても、ふっくんが指し示すプールの水面は穏やかでしかない。でもそんなことは関係なく、「時は大航海時代!」と舞台設定の説明は続けられた。


「まだ見ぬ新天地を求め、幾隻もの船が雨にも風にも負けず海をひた進む。ここ、セーラン地方にも壮大な夢を持って旅立ったひとりの少年がおりました。彼の名は……冒険者、メグーム!」


柊くんが被っていた布を取ると、見に来ていた女子グループの何人かが「メグー!」と歓声を上げた。


柊くんが主役の回というのは、こういうこと。


「メグームは誰も見たことのない楽園のような島を見つけました。しかし、なんということでしょう! 島を見つけて数日後、彼は故郷へ帰る船を失ってしまいました」


スズメも乗せられないであろうオモチャの船が、括りつけられた紐と人の手によって一本釣りされると、ギャラリーから笑いが起こる。


「神様は見ていたのです。コイツは金銀財宝、地位名誉を手に入れたいだけなのだと! なんて浅ましい! そこで息絶えるがいい! いやむしろ生涯独身貴族を貫いて、」


ごん、と鈍い音がしたのはうしろにいた小鷹くんが私情を挟みだしたふっくんの頭を叩いたからだ。
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