柊くんは私のことが好きらしい

空はまだずっと明るいけれど、雲が流れていくように着々と時間は過ぎ、終わりに向かっている。


……私にとってはようやく、始まりだ。


「――ってわけで最後のひとりまで楽しんでってね! こっからはエキシビション! むしろ俺的には余興だと思ってもらえたら万々歳!」


私は嫌だ! と思っている内に、ダラララララ……と今日だけで何十回も聞いたドラムロールが流れ、背中を押された。


「行ってこい」


振り返った先で咲が少しの心配もなさそうに笑って見送ってくれるから、気合を入れ直すことができた。


「行ってきます!」


ダンッ!とドラムロールが止むと同時に、飛び込み台の前に飛び出す。大勢の視線を一斉に浴びてめちゃくちゃ緊張したけれど、


「ひまりーん!!」

「ハイそこ先に呼ばない! ついに現れました! 誰かって? セーラン地方で最強の防御力を誇る守護神、ヒマリンの登場だぁああああ!」

「ひまりーん!」


みっちゃん元気だなあ、とか。そういえばそんな設定だったなあ……と思い出せば、控えめに手を振り返すことくらいはできた。


「メグの彼女だよな?」

「だから違うっつーの!」

「あの子知ってる~」

「なんかバンビの妹だって話らしいよ」

「マジで!? 嘘だろ、似てねえじゃん!」


私も有名になったなあ、とか。色々考えながらも耳に届く雑多な話題に、気持ちが乱されることはなかった。


だってやっぱり、緊張してるし。


終わったら、とんでもないことをしてしまったって、思うかもしれない。


でも、少しだけ期待もしてるんだ。
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