柊くんは私のことが好きらしい

「ひまりーっ!」

「えっ、ちょっと柊く……押さないで危ない! ここ濡れてるから、滑っちゃ……っ!」


言わんこっちゃない!と身をよじって落ちるのを回避できたのは、私だけだった。


バシャーン!と上がった水しぶきに、顔面蒼白。

相手の力を受け流すみたいに、私が柊くんをプールへ落とした感じになってしまった。


喜んでくれただけなのに……。何やってんの私! 一緒に落ちとけよ! これだからモブ歴16年の女は!


「ごめん!!!」


プールから顔を出した柊くんへ全力で謝る。


「ひまりぃ~」

「ごめん! 何やってんだろう私! 本当にごめん!!」


いっそ消えたい! むしろ消してくれ!


「ああ~……も~!」


こんなはずじゃなかったのに!


無事に救出して、びっくりしたって柊くんが喜んでくれて……そのままなんかいい感じに学園祭を終わる予定だったのに! 明確にしとかないから最後の最後でミスるんだ! 学べよ! 私のバカ! おバカ!


項垂れる私の頬に、水がかかる。


土下座しても足りないくらいの気分だったのに、顔を上げたときにはもう、どうってことないと思った。


柊くんが笑ってくれるなら、何も怖くない。


笑ってくれるから、失敗も成功になっちゃうんだ。


「やめてよ~!」

「はははっ! 仕返し!」


その明るさと優しさに、うっかり視界がぼやけたから。


柊くんが浴びせてくる水しぶきを、ただ受け止めた。


本当は少しだけ、内心焦っていたのだけれど。

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