柊くんは私のことが好きらしい
「俺らも先行こうぜ。小鷹なんか待ってても、頼んだ覚えはないが?って言われるだけだし」
「だからって連絡のひとつもしないとか。薄情だなあ、福嗣」
「お前らにだけは言われたかねえよ!」
「咲たちも行こーよ。待ってたくないし」
「うん。あ、でも先にトイレ。これ取ってくる」
「えーっ! そのままでいいじゃん!」
自分のフェイスジュエリーを指差した私は、咲の制止も聞かず「ちょっと待ってて!」と教室を出た。
ちょっと惜しいけど、写真ならいっぱい撮ったし。
それに……多少は私もメイク、直したい。
まあ大して時間かからないんですけどね!
手洗い場でフェイスジュエリーを剥がし、目に見えて変わりようのないメイクを気持ち程度に整える。
ついでに髪の毛も結び直していると、先の廊下から弾むような男女の笑い声が届いた。
後夜祭も終わって下校時刻が迫っている今、校内に生徒はほとんど残っていない。全員で打ち上げをするクラスもあれば、親しい者同士で集まる人たちもいるだろう。
あのふたりは……わからないけれど。楽しそうな笑顔が余計に、1日を終わらせてしまうのが口惜しそうに見えた。
私も……今日がずっと続けばいいって思うけど。
逸る心が、抑え込んでいた想いを急き立てるようで。
「……、」
鏡に映る自分から派手さはなくなって、いつも通りの私に戻ったのに、どうしてだろう。
勇気を、もらえた気がした。