柊くんは私のことが好きらしい
「ひ、柊くん……」
教室へ戻ると、てっきり待ってくれていると思っていた咲の姿はなく。それどころかクラスメイトひとりも残っていなくて、いるのは机に腰かけた柊くん、ただひとりだった。
「おかえり」
教室ってこんなに静かだったっけ。
よく通る柊くんの声と、予想していなかった好機にバクバクと心臓が鳴り始める。
「お、おまたせ、しました……」
焦るな、テンパるな、と言い聞かせ、慎重に言葉を紡いだ。
「待っててくれたんだね」
みんないないって、教室の前まで来た時には気付いた。咲が企んだんだろうってことも、柊くんも拒否しなかったんだろうってことも。経緯まではさすがに満点回答できないけど、教室に入らないって選択肢はなかった。
「ごめん、ちょっと……髪の毛結び直すのに時間、かかっちゃって」
「……うん」
「……」
教室ってこんなに……って、さっきも思ったな。
ポーチを鞄にしまう音が、いやに響くから。
それだけじゃない。この静けさを、知っている。
「……今日、さ」
どくん、と心臓が跳ねる。
柊くんの言葉ひとつで。惑うように、問いかけるように、ひと呼吸置かれるだけで。
「ひまりが出てきたとき、すごい、びっくりした」
「……うん。あの、出ること……秘密にしてた、から」
ダメだ。これじゃあなんで?って聞かれちゃう。