柊くんは私のことが好きらしい
「う、え、っと……」
目が泳ぐ。慣れてないもん、こんなこと。
あれから1週間。突然のことに、逃げるようにして返事を保留にした私は今も、煮え切らない態度ばかり。
どうしよう、どうしよう。
まだクラスの実行委員も出し物も決まってないのに。いつから私と回りたいって思ってくれていたんだろう。いつから誘おうとしてくれていたんだろう。
さっき、みんなと学園祭の話になったとき? それとももっと前から?
なんで、思いもよらないタイミングで実行しちゃうの。そんなの絶対、私、赤くなるに決まってるじゃん。
断る理由だって見当たらない。回ってみたいって思うよ。むしろ私でよければ回らせてくださいって感じですよ!
「そ、そう、思い、ます……」
言葉の途中で目を伏せた。顔が赤くなってるぶん、余計に“YES”が恥ずかしくて。
「やった! 約束なっ」
1時間目の予鈴が鳴り響く中、柊くんは満面の笑みをたたえた。
「じゃ、戻ります」
「……はい」
零れ落ちそうなほど柔く細めた目。並びのいい歯が覗くゆるんだ口元。一心に向けられる嬉しいの気持ち。
きらきら、きらり。柊くんが笑うと、しばらく私の瞳はまるで万華鏡のよう。
「学園祭、すげー楽しみになった」
体は自分の席へ向かっているのに、嬉しそうな笑顔はセリフの最後まで私に向けられていた。