柊くんは私のことが好きらしい
「知って、ます……」
「だよねえ! 知らないほうがおかしいよねーっ」
きゃぴきゃぴと楽しそうな彼女たちの言葉に棘を感じるから、同じようには笑えないまま時間だけが過ぎていく。
「それでさあ、高遠さんはどうするの?」
ああ……やだな。
彼女たちの前に立っていたくない。
品定めするような目つき。結果はとうに知れてる。
私は柊くんにふさわしくない。
……はっきり言えばいいのに。私も、同じだけれど。
「わ、かりません……」
ぎゅっとおなかの前で両手を握りしめ、絞り出した返答は彼女たちの熱を下げたようだった。
唐突に訪れた沈黙が、冷気のように肌を刺す。
「え、なんで?」
「てか、何が? 返事出すだけじゃん?」
「……そうですけど、」
どうすればいいかわからないから、返事も何も出てこないんだよ。
少し前までは、お互いただのクラスメイトだったはずなのに。それが実は片思いされていたなんて、しかも相手があの柊くんだなんて。
こんなこと人生で二度と起きないって思うくらい、私には衝撃的だった。
「いや、あのさ……メグに告られたんだよね? どうすんのー?って軽く世間話?したかっただけで。あたしたち、そんな難しいこと聞いてる?」
「……」
黙ってしまうと、彼女たちは顔を見合わせながらも、このミッションを遂行する決意は揺らがないみたいだった。