柊くんは私のことが好きらしい
「え? 何? あたしたちの話聞いてた?」
これは絶対やらかしてしまったパターン……!
冷ややかな笑顔に唇を結べば、「え? もしかして伝わってない?」と笑顔がほころび始める。
「うちら自分のために言ってるんじゃないんだけど」
それはさすがに嘘では……。
「高遠さんが彼女になったら、メグがバカにされんの!」
「うっは。マジで?」
え……。
「やだ、ウソ……ッ」
私を囲っていた女子4人が一斉にその身を後退させる。崩れた囲いの先で、柊くんが4人の顔を覗くみたいに首を傾げていた。口角は上がっていた。
「バカにしてる奴って誰? 女子? 男子? タメ? 先輩?」
尋ねながら近づいてくる柊くんの質問に誰も答えない。それどころか後退して、団子みたいに身を寄せ合う。
「それともその話自体がデマ? ホント? どっち?」
キュッ、と。私と彼女たちのあいだで立ち止まった柊くんの上靴が鳴る。
「メ、メグ……あの、」
「まあどっちでもいいよ。俺がバカにされるなら」
でも――と柊くんは言い、私を背に彼女たちの正面に向き直った。