mariage~酒と肴、それから恋~《5》
一度強く声を出すと、止まらなくなった。

「成海さんが言ったんですよ?!私に、女として幸せになって欲しいって!

私もそうしようって、成海さんのこと忘れようって一生懸命なのに!

それなのに、泊まってけとか、30年後だとか、期待持たせるようなこと言わないで下さい!

私が、どんな想いでこの梅酒を持ってきたと思ってるんですか!」


一気にまくし立てた。
感情が高まりすぎて、肩で息をしていた。


そんな私を成海さんは恐る恐る覗き込む。

「怒ってる?」


「怒ってないです!」


「怒ってるじゃん」


「怒ってないですってば」

もう、やだ。本気で泣きそう。


「じゃあ、終わらせようとしないでよ。俺はやっと始めようとしてるのに」

しょんぼりした表情で私を見つめている。


はたと時間が止まる。


始める?何を?

「――どういうことですか?」


「そのために用意したこの燻製チーズを梅酒と一緒に食べて欲しいんだ」


成海さんが指し広げた手の先の燻製チーズと梅酒に視線を落とす。

「意味がわからないんですけど」


「食べたら分かるから。
俺が月子に伝えたいこと、きっと分かってもらえると思う」
< 20 / 27 >

この作品をシェア

pagetop