mariage~酒と肴、それから恋~《5》
私はその手を両手で握りしめ、そして笑いかけた。

「…この為に、わざわざ燻製作ったんですか?」


「そう」


「何それ、遠回し過ぎっていうか、演出し過ぎ」


「ごめん。こういうきっかけでもないと伝える勇気が出なくて」


成海さんは恥ずかしそうに表情を崩して、自身も梅酒のグラスを手に取り私にかかげて見せる。

カチンとグラスを合わせて乾杯すると、成海さんも梅酒を飲んだ。

「うん。美味しい」


誉められたのは梅酒の味なんだけど、私が誉められたみたいでくすぐったい。


「ある時たまたま気づいたんだよね、梅酒のお湯割りと燻製チーズが合うって。

梅酒は月子が作ってくれるから、俺が燻製チーズを作って、食べさせてやりたいなって。

庭と燻製が出来上がって、お湯割りが美味い季節になったから、満を持して呼んだんだ。

ちょうど、本社に戻るのが決まった良いタイミングだったし」


「え」


きょとんと見返すと、したり顔でピースしてした。


「来年度から本社に戻ることになった」


「ええええええ!!!?」
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