現場系男子にご用心!?【長編改訂版】
――じゃあ、私は?

その真実を聞かされて、私はどうしたらいいんだろう。

一緒に付いていく?
誰も知らない異国の地に、岡田さんと共に。


ではこの仕事は?

こんなに頑張って努力して、ようやくやりたかった仕事に就けた。
それを辞めてまで、岡田さんと結婚してタイへ行ける?

仕事は辞めたくない。
だけど、岡田さんとも離れるのは苦しい。

近くに岡田さんの笑顔が見られなくなるのは辛い。
岡田さんに触れられなくなるのが辛い。

だけど。

だけど――……。


非情にも開始五分前のベルが鳴る。
知らずのうちに、昼ご飯も食べずに外でずっとそんなことを考え悩んでいたようだ。

そのベルの音に私は我に返り、慌てて自分の持ち場へと戻った。

こんなスッキリとしない気持ちで仕事をするのは、正直気が進まない。
もう少し気持ちを落ち着けて仕事をしたかった。

あの時間だけでは、答えが出ないのは分かっている。
でも、もう少し自分の気持ちを整理出来てもいいはずだった。

なのに思った以上にショックだったらしい。
整理どころか、その事実を受け入れられずに悩んでいる私がここにいる。

この話が嘘だったら、夢だったらどれだけいいかと思ってしまう。


だけど、時間は待ってはくれない。
始業のベルが鳴り、周りはまたいつもの煩さに戻った。

私も保護具を付け、深呼吸をするとまた作業を始める。

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