正しい男の選び方

今日もまた、葉子は朝からレジに入っている。

例によってパートさんの代理だ。今月はやけにピンチヒッターが多い。
残業代も結構つきそうで助かるかも、などと思いながら、葉子がレジ打ちをしていると、例の男がやってきた。

今日は、ラフなスポーツウェアを着ている。
速乾性のVネックはアディダスのサッカーウェアだろうか。短パンに足元はナイキのウォーキングシューズ。

鍛えた体を見せびらかすような格好だった。

シャツには、サングラスがひゅっとひっかけてある。手首をチラリと見ればもちろんアップルウォッチ。

あんたは海外セレブかっちゅーの!

心の中でツッコミを入れながら、バスケットの中を見た。

クリフバーが10個ぐらい無造作に入れてある。
(絶対に10個も食べないだろう……? どうしてそんなにばんばん買うんだよ、オイ!)
ドライフルーツとナッツのミックスされたスナックのパック。それにミネラルウォーターが何本か。

葉子は、男の全貌を掴んだような気がした。

「ジムですか?」

クリフバーを次々スキャンしながら、葉子は好奇心を抑えることができない。

「一汗流そうと思ってね」

さりげない返事が返ってくる。葉子はもう少し突っ込みたくなった。

「リッツでのビジネスランチの前に?」

男は目をしばたたかせた。

葉子は腹の中で「まんまじゃないの」と苦笑いをする。
自分の予想が当たって、思わずにやにやと笑いながら商品を袋に詰めていると、男は品物を受け取る時に

「今日も一日頑張ってね! それじゃ、良い一日を!」

と爽やかに挨拶をして出て行った。

良い一日を、か……。

確かにタワマンの住人にちがいない……。

葉子の苦笑いは止まらない。



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