正しい男の選び方

その二日後。

政好から夕ご飯のお誘いがあった。
おととい会った時も、ろくに話が出来なかったし、久しぶりのデートだ。
いつもより少しだけ早めに上がらせてもらい支度をする。葉子は気合いを入れていた。

帰りがけに浩平とばったり会った。

「よう」
「……こんちは」

むっつりとした声にしかならない。
このタイミングで浩平に会いたくなかった。

「これからデート? いつもにも増して綺麗になっちゃって」

だから、この男はどうしてこういうことを言うんだろう?
しかも、にっこりと笑って。
葉子が黙っていると、浩平は朗らかに話を続けた。

「どこに食べに行くの? このヘン?」

「……近くのインド料理」

「へえ、うまいの?」

「うん。美味しい。特にベジタリアンのカレーが」

「……葉子にピッタリってわけだ。今度連れてってよ?」

「……」

「その姿見たら、サンゴ礁、絶対惚れ直すな。すごく綺麗だ」

「……あの、遅れるから、もう行かなくちゃ」

「あ、ああ、引き留めて悪かったな。じゃまた!」

去って行く葉子に浩平は手をふって見送った。
これから政好に会う、というのに、また心がかき乱された。ただ、偶然会って、挨拶のような言葉を一言二言交わしただけだ。

それだけ。
それなのに。

どうして、心臓が脈打つ音がこんなにもはっきりと葉子の胸に聞こえるのか。


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