正しい男の選び方

途中ではっとした顔をして、政好は口をつぐんだ。

「……」

葉子は返事ができなかった。
浩平の顔がふいに浮かんだ。

(ダメだ!なんかもう、いろいろ限界だ!!)

気がついたら、葉子の足は浩平のところに向かっていた。

(会いたい……
 浩平に会って、話を聞いて欲しい。
 違う。
 浩平に会って、抱きしめて欲しい。
 あの感謝祭の時みたいに、ただ黙ってふんわりと包んで欲しい。かすかに漂う甘いバニラの香りに包まれたい)

店を飛び出して「アーバンビュー」の中に入ろうとしたところで、葉子は浩平にばったり会った。
隣りにはカナがいる。
何という間の悪さ!

「あ……浩平」

浩平はにこっと笑う。

「今日はよく会うなー」

隣りにいるカナも穏やかに微笑んでいた。

葉子はくるりときびすを返した。そのまま走って逃げ出す。

この涙は、浩平には見られたくなかった。

「葉子? どうしたの?」

浩平が後ろから声をかけてくるが、葉子は無視をしたまま走り去った。

そのまま家に帰って、葉子はひとしきり落ち込んだ。
だから浩平と関わるのは嫌なのだ。嫌な気分にさせられたり、がっかりさせられたり、心が落ち着かない。

結局、浩平はカナのことが忘れられないのだ。
本人も言ってたじゃないか、カナが大好きだった、って。あれは、永遠に過去形にならない浩平の気持ちなんだ。


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