正しい男の選び方
「……ありがとね」
「……今の仕事、好きなんだ?」
「うん。好き」
「食べられないもの、多いくせに」
「んー、だからだよ」
「だから?」
「美味しい野菜を売って、一人でも多くの人をベジタリアンにする!」
「何、葉子のミッション?」
「ま、そんなとこかな」
「失敗じゃん」
「どういうことよ?」
「オレ、絶対、ベジタリアンになんかなんないもん」
「……してみせる」
二人は声をたてて笑った。
その笑い声もろうそくに照らされて柔らかく響いていく気がする。
「……なんだかロマンチックね」
「ろうそく?」
「うん。それに素直になれる気がする。何でかな」
「ありのままを見せても暗闇が隠してくれそうな安心感があるんじゃない」
「……そうね、そうかもしれない」
部屋が暗いせいだろうか。浩平の言葉をいつもよりもずっと素直に受け入れる事が出来る気がする。
それに、自分の気持ちも素直に表せる気がした。
「……確かに、君の言う通りなのかもしれない」
「何が?」
「夜は、暗くてもいいのかもな」
「スカイツリーの明かりも消す?」
「悪くない」
「……初めて意見が一致したみたい」
葉子の胸にじんわりとした気持ちが広がった。