正しい男の選び方
「何してたの?」
浩平が急に話題を変えてきた。
「ああ、映画を見てた」
「どんな映画?」
「ノッティングヒルの恋人」
「あー、ジュリア・ロバーツ」
「うん、ヒュー・グラントの」
「意外とロマンチックなのが好きなんだ?」
「意外と?」
「だって、君は勇ましく戦う女じゃない。戦う女もロマンチックな恋がしたいってことだ」
「バカにしてる?」
「……そうじゃないよ。女のコらしい一面があるんだなって、ほっとしてる」
浩平がくすくす笑う。
女のコらしい、なんて言われて、少しくすぐったい気持ちになる。それでも不思議と悪い気はしなかった。
やっぱり薄暗いろうそくの光のせいだろうか。
なんだかとても不思議な夜で、二人はずっとおしゃべりを続けた。穏やかで優しい時間が訪れる。
朝、目が覚めると、葉子は自分のベッドに横になっていた。昨晩の格好のままベッドにもぐり込んだようだった。
浩平も床にごろんと横になっている。葉子のベッドカバーをはぎ取ってそこにくるまって寝ていた。
葉子が部屋の中をぐるりと見回すと、昨晩の残骸が部屋のあちこちに残されている。
二人ともしゃべり疲れて寝てしまったみたいで、飲みかけのグラスや食べかけの食べ物などがそのままの状態で残されていた。
葉子がのろのろと立ち上がって朝の支度を始めようとすると浩平ももぞもぞと起き出して来た。
「白日のもとにさらされると、身も蓋もないわね……」
葉子がグラスを片付けながら言った。
「強者どもが夢のあと……って感じだなー」
「夕べは暗くて全然わからなかった。夜はいいとこだけしか見えないのかもね」
「確かに。夜にあかりを煌煌と照らして見たくないものまで見なくたっていいのかもなぁ」
浩平も苦笑いをしている。
支度をして家をでる。一旦家に帰る、という浩平に職場まで車で送って行ってもらった。
それからは、昨日とあまり変わりのない忙しい一日が始まった。