正しい男の選び方
(どうしよう! 出て来ない。何だったっけ?)
目が泳ぐ。
……焦れば焦るほど、頭には何一つ言葉が浮かんで来なかった。
呼吸のできない金魚みたいに口をぱくぱくさせるが、言葉は飛び出して来ない。
葉子は思わず浩平の方をちらりと見た。浩平がそっと葉子の側に歩み寄る。
片手で葉子の手をぎゅっと握って、それからさっと腰にその手を回した。
耳元でそっとささやく。
「大丈夫だから、落ち着いてごらん。小さく咳払いを一つして」
緊張のあまり呼吸が浅くなっている葉子は、いわれた通り、小さく咳払いをして呼吸を整えた。
浩平は、それから会場の方にいる人々に向かって困ったように笑う。
「どうしましょう、皆さん、もうすでに、地球の酸素が薄くなっているのかもしれませんね?」
会場からくすくすと笑い声が漏れ、柔らかい雰囲気になった。
葉子は少しほっとする。……急に言葉がよみがえって来た。
「本当に。ここの会場にも木を植えた方がいいかもしれません」
今度はもう少し大きな笑いになった。