正しい男の選び方
東京にて

羽田に到着すると、浩平とはそこでお別れだった。
浩平は葉子のために車を用意しておいてくれた。

「オレのワガママでニューヨークまで付き合ってくれてありがとう。今晩はウチにかえってゆっくり休んで英気を養って下さい」

葉子を車にエスコートしながら、最後の最後まで爽やかな笑みをたたえて、浩平はそう言った。
とても丁寧な口調だったけど、けれども、どことなくよそよそしい。

あの夜のしこりはまだ消えていない。

「こちらこそ、お世話になりました」

葉子も必要以上に丁寧に応じて車は静かに滑り出した。

実に三週間ぶりの我が家だ。
家の中は綺麗に片付いて、どこもぴかぴか。浩平がお掃除を頼んでいたに違いなかった。
懐かしいような、自分ちじゃないような妙な気持ちがする。葉子はベッドの上にごろんと横になった。

……

…………

とにかく明日まではお休みを取ってある。今は何も考えずに休もう……

葉子は素早く寝まき(Tシャツとジャージ)に着替えて目をつぶった。


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