正しい男の選び方
政好と言い争いをしたのなんて、葉子にはもうずっと昔のことのように思える。
色々なことがめまぐるしく起きて、政好のことを思い出すひまがなかった。
それに、葉子はもう、政好から連絡が来るなんて思っても見なかったから、今、こうしてカフェで向かい合っているというのが、なんとも納まりが悪くて気恥ずかしかった。
「ごめん」
政好は葉子に会うなり頭を下げた。
「自分のことしか考えてなかった。葉子の気持ちとか全然抜けてて、絶対喜ぶだろう、ってそれしか考えられなかったんだ」
「……もう、いいよ。終わったことだし」
「……そう言わずに、もう一度考えてもらえないかな。僕のこと」
「え?」
「ハワイについて来い、なんて言うつもりはないし、いや、もちろん、葉子が来てくれたらすごく嬉しいんだけど……。
休みの時に、僕がこっちに来たっていいし。その、……だから、もう一度考えてもらえないかな……?」
ゴニョゴニョゴニョ……
その後も、政好はくどくどといろんなことを話していたが、葉子の耳には低い声の呟きにしか聞こえなかった。
目の前の政好の言葉が耳に入ってこない。
政好が一生懸命になればなるほど、どこか人ごとのような気がしてきて、葉子の気持ちはどんどん白けていった。
(どうしてだろう……?)
自分たちのことを話してるのに全然興味が起きない。