正しい男の選び方
この唇が私にキスをしたんだ……
あの夜、浩平は葉子を優しく抱きしめて体中にキスの雨を降らせた。
浩平の唇が葉子の体をそっと吸い寄せるたびに、葉子は自分がどこかに行ってしまうかのような錯覚を覚えた。
意識が遠のいてしまいそうだった。そのくせ、浩平が触れるところだけは、はっきりと感じることができたのだ。
浩平は、まるで繊細なガラス細工を取り扱うかのように、丁寧に優雅に葉子を抱いた。
柔らかい指先で触れられる度に体が溶けてしまうような、そんな気持ちになってあんなのは初めてだった……。
思い返すだけで、息が乱れそうだ。無意識のうちに浩平の指先に視線がいって、葉子は顔を赤らめる。
「じゃ、オレはそろそろ行くから」
急に浩平が声をあげて、葉子は我に返った。
「あなたは? 一人で食べるの?」
「まさか。誰かに声をかけるさ。女には困ってないから大丈夫だよ」
さらりと言って店を出て行く。
入れ違いに政好がやってきた。