正しい男の選び方

「急な電話でびっくりしました」

葉子自身だってこの展開に少し驚いている。

「……迷惑でしたか?」

「いえ……嬉しかったです」

「本当に? 急に電話してきて強引だなーとか思いませんでした?」

「強引だなーとは思いました……けど、嬉しかったです。何かあったんですか?」

「あ、実は、Tシャツとバッグのデザインを少し考えてたら、急に緑川さんと話がしたくなっちゃって……」

葉子は落書きのように紙に書きつけた絵を見せた。

「葉っぱを肺のように見立てて、こんな風にして……上の方は緑で下の方は茶色のグラデーションにしたら効果的かな……なんて思ってるんです」

「なるほどー。緑が少なくなって息苦しくなってくるのを表してるんですね。インパクトがあっていいんじゃないですか?」

そこで飲み物と食べ物が運ばれてきたので二人は乾杯した。

「まずは喜んでもらえて良かったー。うまくいくといいですね!」

葉子が明るい声を出すと政好も頷く。

「明後日、販売するクッキーの試食に行くんですよ。良かったらいらっしゃいますか?」

思いがけない政好からの提案に今度こそ、葉子は舞い上がった。

「わー、行きたい、行きたい。でも、私なんかが行っていいんですか?」

「もちろん。……その、長澤さんがきてくれたら僕も嬉しいです」

その後もなんだかいい感じで会話が弾む。おしゃべりが楽しい。
料理に手をつけながら、政好がふいにおや、という顔をした。

「このチキン……長澤さんが頼んだんですか?」

しまった! 政好が来る前に浩平が頼んだものに違いない。
食べ物に全く注意を払ってなかった葉子は、政好に指摘されるまで全然気がつかなかった。

「え……と、ここの店のオススメだっていうから、緑川さんに……どうかなーと思って……頼んじゃいました。
 余計なことしちゃってスミマセン……」

しどろもどろになる葉子である。

「あー、なんか嬉しいなあ。気ィ使わせちゃったみたいで申し訳ないです」

「……い、いえ。そんな、当たり前ですよ」

葉子の胸が一瞬ちくりと痛んだ。




< 84 / 267 >

この作品をシェア

pagetop