正しい男の選び方
「急な電話でびっくりしました」
葉子自身だってこの展開に少し驚いている。
「……迷惑でしたか?」
「いえ……嬉しかったです」
「本当に? 急に電話してきて強引だなーとか思いませんでした?」
「強引だなーとは思いました……けど、嬉しかったです。何かあったんですか?」
「あ、実は、Tシャツとバッグのデザインを少し考えてたら、急に緑川さんと話がしたくなっちゃって……」
葉子は落書きのように紙に書きつけた絵を見せた。
「葉っぱを肺のように見立てて、こんな風にして……上の方は緑で下の方は茶色のグラデーションにしたら効果的かな……なんて思ってるんです」
「なるほどー。緑が少なくなって息苦しくなってくるのを表してるんですね。インパクトがあっていいんじゃないですか?」
そこで飲み物と食べ物が運ばれてきたので二人は乾杯した。
「まずは喜んでもらえて良かったー。うまくいくといいですね!」
葉子が明るい声を出すと政好も頷く。
「明後日、販売するクッキーの試食に行くんですよ。良かったらいらっしゃいますか?」
思いがけない政好からの提案に今度こそ、葉子は舞い上がった。
「わー、行きたい、行きたい。でも、私なんかが行っていいんですか?」
「もちろん。……その、長澤さんがきてくれたら僕も嬉しいです」
その後もなんだかいい感じで会話が弾む。おしゃべりが楽しい。
料理に手をつけながら、政好がふいにおや、という顔をした。
「このチキン……長澤さんが頼んだんですか?」
しまった! 政好が来る前に浩平が頼んだものに違いない。
食べ物に全く注意を払ってなかった葉子は、政好に指摘されるまで全然気がつかなかった。
「え……と、ここの店のオススメだっていうから、緑川さんに……どうかなーと思って……頼んじゃいました。
余計なことしちゃってスミマセン……」
しどろもどろになる葉子である。
「あー、なんか嬉しいなあ。気ィ使わせちゃったみたいで申し訳ないです」
「……い、いえ。そんな、当たり前ですよ」
葉子の胸が一瞬ちくりと痛んだ。