正しい男の選び方

「お鍋なら失敗のしようもないしね」

カナがおかしそうに笑う。

「鍋の奥深さを知らないだろう。オレの鍋を食べたら、もう他の鍋なんて食べられなくなるよ」

「まー、言うわね。じゃあ今晩は期待してる」

そう言って、カナは葉子がレジを打っている目の前で、ちゅっと浩平の頬に軽くキスをした。

葉子は黙々とレジを打っている。

なんでこんなにたくさんの魚介類が必要なんだ。しゃぶしゃぶ用の肉も買っている。
豆腐も野菜もちょこっとずついろんな種類のものを取り揃えていた。
昆布とかつおぶしもある。柚子胡椒とかかぼすとかそんなものまでカゴの中に入っている。

「ずいぶん贅沢な鍋になりそうですね」

葉子が言うと、浩平が屈託なく笑う。

「最高に美味しいのを食べてもらいたいからね」

「お鍋、楽しみですね」

葉子はカナに向かってそう言ってにっこりと笑おうとした。
しかし、ぎこちない動作に強ばった声になってしまって、自分でも驚いている。


二人が行ってしまった後、何だか心がざわざわして、作業に集中できない。
葉子は、浩平に会って話をすると心がかき乱されるのがとても嫌だった。

浩平を見かけるまでは、今日出来上がってきたTシャツとバッグのことですごくワクワクしていたのに、今は腹立たしいような気持ちでさっきまでのワクワク感が跡形も無く消え去っている。

そういう風になってしまうことが、葉子はすごく嫌だった。



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