スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
らみちゃんは、勢いよく首を左右に振った。
髪が弾んで乱れる。
真っ赤に怒った顔で、ただ加納をにらんでいる。
「ぼくが言っていることの意味がわからないのか? きみに何の権限があって、ぼくと彼女の大事な話を邪魔するんだ?」
「……だって、あたしの先生だもん……!」
食いしばった歯の間から、うなるように、らみちゃんは言った。
加納の薄い唇が歪んで、舌打ちの音が漏れる。
ビクリと、わたしの肩が反射的に跳ねた。
加納がわたしを見た。
長い腕が、らみちゃんの頭上からやすやすと、わたしの肩をつかもうとする。
頼利さんがきびすを返した。らみちゃんのほうが早かった。
「あたしの先生をかえしなさい!」
小さな手に引かれて、わたしは走り出した。
店じゅうから集まる呆然とした視線の中を、一目散に扉に向かって。
背中に加納の怒鳴り声が追いすがる。
それを払いのけるように、頼利さんが駆け寄ってきて、わたしの肩を抱いた。
エンパヰヤの重い木の扉をくぐり抜けて、わたしは外へ連れ出された。
湿った夜風に、やっと、ちゃんと息ができるようになった。