スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
「先生がね、ぼうしみたいだった」
「帽子?」
「えっちゃんのね、白いぼうし。大男がつまんで、ぼうし、白くて小さくて、食べられるの」
「もしかして、『名前をみてちょうだい』に出てくる白いぼうしのこと?」
らみちゃんは、こっくりとうなずいた。
『名前をみてちょうだい』は2年生の国語の物語単元の教材だ。
えっちゃんという女の子が風に飛ばされた白いぼうしを追い掛けるという、小さな冒険が描かれている。
えっちゃんのぼうしは、きつねの男の子と牛の女の子のもとを経て、大男の手へと飛ばされていく。
大男は、ぼうしに書かれた名前を見ようともせず、ぼうしをひと呑みにして、傲慢な態度で、えっちゃんたちをも食べてしまおうとする。
「らみちゃんは、えっちゃんだったのね?」
「うん」
「だから、怖がったり逃げ出したりせずに、『かえしなさい!』って言ってくれたんだ?」
「うん」
恐ろしい大男を前に、きつねと牛は逃げ出してしまう。
けれど、えっちゃんは、白いぼうしが紛れもなく自分のものであることを主張して、真正面から大男と対峙する。
そして、怒りでぐぅんと大きくなった体で、「あたしのぼうしをかえしなさい!」と言い放つのだ。