スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
わたしは鼻をすすり上げて、目をパチパチして涙を抑えた。
今日、泣いてばっかりだ。
もとから手抜きなメイクで、むしろ助かった。
「お話、うかがえてよかったです。らみちゃんのこと、特別扱いするわけじゃないですけど、気に掛けるべきところは、ちゃんと見ておくようにします」
「そうしてもらえたら嬉しい。あいつはやっぱり変わり者だし、いずれアメリカに渡ると思う。
日本にいて、普通って呼ばれるレールの上で大人になっていくより、ドラムの腕を信じて飛び出していくほうが生きやすいだろうからな」
「はい。ここ数日、WJOの皆さんとの様子を見ていると、らみちゃんには日本の小学校は狭すぎるんだろうなって感じました。
ちょっと心配ではありますけど、アメリカで元気に活躍してくれる日が楽しみです」
「らみが将来、ミュージシャンとして生きていけるように、おれがドラムと英語を教えてる。
先生、あんたは学校で、常識とか教養とか、らみが覚えられるだけのことを全部、覚えさせてやってくれ。あいつは想像力が働きにくい代わりに、記憶力と学習力がずば抜けてる」
わたしはうなずいた。