水玉模様
「あぁ、そういえば花火の音するわね。それより和奈、早くご飯食べちゃいなさい。」

「はーい♪」

あたしは言われるままに、テーブルに座った。

「あ、お母さん、あたしの浴衣出しといて?あさって着るの。」

「いいけど、あんたが浴衣なんて珍しいね。」

「お姉ちゃんデェトぉ?」

「和紗は黙ってて!」

「はいはぁーい。」


デート…か。

肩書きなんか、どうでもいい…。

お母さんが出してくれた浴衣は、薄紫のちりめんの浴衣。

ピンクや黄色の小さな花が、染められている。

去年は一度だけ着た記憶があるけど、今年はあやね達と行った時も着なかったから、出番がないと思っていた。

気に入ってるけど…こうして見ると、新しいの欲しいなって思っちゃう。

和紗の浴衣は姫系だから、借りようにもあたしじゃちょっと系統が違うから厳しい。

「…ま、いっか。」


なんでそう思ってしまったんだろう…。

あたし、浮かれすぎてたんだ。

この浴衣のせいで、会いたくない人との再会を果たしてしまうだなんてーーーあたしは、なんにも…考えていなかった。



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