水玉模様
「何が…?」

「お姉ちゃん、旭市の花火行くんだよね?しかもカレシと。」

「彼氏じゃないから!」

自分で否定したくせに、哀しくなる。

「ふーん…。ならいいけどぉ?」

あたしは、和紗の言ったことの意味を…全く解っていなかった。

何が言いたいかも解らなかった。

もっとちゃんと聞いていれば―――…。

でもそれは、気付いた時には遅かった。

後悔とは良くできた言葉で、出来れば今この時に戻りたいと思うのは、数時間後のことになるーーー…。

今のあたしは、篠田くんに会えることへの嬉しい気持ちで、胸がいっぱいだった。



プシューと扉が閉まり、少しずつ加速していく電車。

「…はぁ…はぁ……はぁ…。」

ギリギリ乗り込んだ電車の中には、浴衣姿の子もちらほら見えた。

ーーー2輛目に移動しなきゃ。

ここは4輛目。

あたしは少しずつ人をかわして、前の車輛へとゆっくり歩いた。

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