水玉模様
今だけ、少しだけ、お願い…。

あたしだけの、篠田くんでーーー。

「…ん?」

キュっと掴んだ…篠田くんのTシャツの裾。

「あ、歩きにくい、から…。」


ドォォ…ン……!!

どうしよう…どんな顔してるか、まともに見れないよ。


ドォォ…ォォ…ン!


困ってたり、してるのかな。

何かーーー…言って。

篠田くん…。


「和奈……?」


ドォォ…ン…!

ふと呼ばれた…あたしの名前。

それは、背後からで…。


篠田くんじゃ、なかった。

聞き憶えのある声に、おそるおそる振り返る。


―――やっぱり。

「やっぱり和奈じゃん!その浴衣ですぐわかったし。」

「…。」

篠田くんのTシャツを掴んだままのあたしの手が、少しだけ震えていた。

あたしの事を”和奈”と呼ぶ、数少ない人の中の一人…。

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