水玉模様
“ピンチを救ってくれた王子様にでも見えたんだろ?”


なんでそんなこと言うの?

あたし、瞬のこと…ちゃんと好きだよ?

ちょっと、動揺しただけだから。


「あたしこそ…ごめんね。ちょっとビックリして……。」

とりあえず、その場を取り繕おうとしたあたしだった。

「でも、泣いて…。」

「大丈夫ッ、大丈夫…だから。ね。」

早く瞬の所に戻らなきゃ…。

あたしは持っていたハンドタオルで涙を拭くと、篠田くんに背を向けて扉の方を向いた。


「―――あの時…。」

背後から、篠田くんの声―――振り向いちゃいけない…。

「…。」

あたしはキュッと唇を結んで、扉に手を掛けたーーー。



「あの時、俺も好きだって言ってたら、今は違ってたのかな…。」

独り言みたいに言った篠田くんの言葉が、背中からあたしを突き刺した。

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