水玉模様
仕方なく、急いで階段を駆け降りた…せっかくインターホンに応答しようとしても、帰られてはあたしが動いた意味がない。


「…。」

インターホンのモニターには、予想外の顔が映っていたーーー。

「あやね…なんで……。」

慌ててドアを開け、玄関へあやねを招き入れた。

「ちょっと瀬口ッ!」

「…え。」

イキナリ大声をあげるあやねに少しびっくりしながらも、今はそれに構う余裕などなかった。

「昨日からどーしちゃったの⁈みんな心配してるよ?今日だって…全然連絡とれないし。」

「あ、ごめ…。充電切れ…かも。」

あやねが泣き出しそうな声を出すから、咄嗟に充電切れだなんて嘘をついてしまった…。


「とりあえず、入って。」

あやねをなだめるでもなく、あたしは淡々とその場をやり過ごした。

今は誰かに気を遣える様な状態じゃない。

「今、瀬口1人?」

階段をのぼるあたしの背中に、あやねの声が触れる。
< 289 / 358 >

この作品をシェア

pagetop