ダブル王子さまにはご注意を!
藤井さん……もとい郁美は車椅子を動かそうとするけれど、一樹が止めて後ろに回ると押してこちらへ近づいてきた。
(ふ~んだ、私に対する態度とずいぶん違いますこと)
「まだリハビリ続けてるんだから、無理はするなよ」
「ありがとう……でも大丈夫。一樹くんたら心配し過ぎだよ」
「そういう過信が一番良くないんだぞ? わかってるのか」
「……ちゃんとわかってるよ。でも、せっかく真由理ちゃんとお友達になれたんだから……自分でしたかったの」
僅かに頬を染めて照れながら俯く郁美。そこに「そうか」と優しい眼差しを向ける一樹。
(うお~い、いちゃつくならよそでやってくれい)
ほわんとあったかい空気に包まれる……癒されるけど……アラサーなぼっち女には毒なんですけど。
それに、一樹が郁美の頭を優しく撫でたりとか。二人が視線を交わして照れたように微笑みあうとか……甘ったるい少女マンガ並みに砂を吐きそう。と同時に、どうしてかチクチクと胸が痛む。
(いかんいかん……ぼっち女の嫉妬なんて見苦しい。アラサーにもなって何してんのよ、私は)
どう見ても相思相愛で付き合ってるでしょ? ってお似合いな二人。私が入り込む隙なんて……と考えたところで愕然とした。
(え、隙って……なんで私そんなこと考えるの? そんな必要ないでしょ!)
バカバカ! と自分を叱るために頬をぴしゃんと叩いた。