ダブル王子さまにはご注意を!
「あのね~だから、彼女の名……あ゛だ」
ひとの頬をつねりおったよ、一樹のやつ!
けど、それも気づかない二人はなぜか話が微妙に合ってた。
「はい……確かにわたしはお料理が唯一の趣味ですわ。小さな頃から身体が弱くて……よく学校を休み入院ばかりしてましたから。ミニキッチンのある療養所等で作ってましたの……でも真由理ちゃんにはまだ」
「やっぱり! 見事なお料理の腕をお持ちなんですね」
がしっ! と彼女の手を両手で握りしめた早乙女さんは、目をキラキラさせて見つめた。
(てか人の話くらい最後まで聞こうよ)
「奇遇ですね! さっきも言いましたが、僕も料理が趣味なんです。ぜひぜひ、いろんなお話をしましょう」
「え……ええ、わたしでよければ……」
押しの強さに負けたのか、郁美は頷いてた。優しそうな彼女だから断りきれなかっただけかもしれないけど。
「よ……っしゃああああああ!」
早乙女さんは拳を突き上げて奇声を上げるけど、ここは病院だから静かにしましょうよ。
「……早乙女さん、もう少し静かにできませんか?」
げんなりして声をかければ、はっと我に返った彼は私に袋を差し出してきたけど。
どう見ても、100均で売ってるお菓子の詰め合わせ。紙箱のケーキだかは当然郁美の手に……彼女は遠慮してたけど。
ま、気持ちだけでも嬉しいし。仕事帰りで疲れてる時にわざわざ来てくれたのはありがたいからね。それにお茶菓子にはなるから。ありがとう、といただいておいた。