ダブル王子さまにはご注意を!
中庭まで車椅子を押した早乙女さんは、ねずみ色のパーカーを郁美の身体に掛けてあげた。
「風が冷たい。寒くないですか? よかったらこのパーカーでも」
「まぁ、ありがとうございます。けど、早乙女さんは寒くないのですか?」
郁美が羽織ったパーカーの袖を伸ばして「お身体大きいんですね」と微笑んだだけで、早乙女さんの目が再びハートに……。実にわかりやすい。
「ぼぼぼ……僕は大丈夫です! これでも寒さに強いんです。何なら全裸で走っても構わないくらいですよ」
「まぁ、早乙女さんたら。ふふふ。ユニークな冗談をおっしゃいますのね」
「い、いえ。それほどでもありますよ。あなたのご要望があればいつでも……」
(うお~い! 頼むから病院なんかでストリーキングなんざしないで~犯罪だから、それ)
ほのぼのした会話だけど、内容が下品過ぎる……。
脱力感満載で二人の後を歩いてるのは、私だけでなく一樹もなんだけど。なぜか彼は前の二人に無関心そうに見えた。
それより、周りの様子を油断なく見ているような?
いつもぽわんとお間抜けな顔つきだけど、緊張感をみなぎらせた今の彼はまるきり別人にすら見える。
「ね、一樹どうしたの? なんか眉間にシワ寄せちゃって……」
気になってそこを指先でつつけば、彼はハッと我に返ったようだった。