ダブル王子さまにはご注意を!
「あの赤いライトが見えるか?」
「う、うん」
一樹の示した先にあるのは、コンクリートの壁の上にある赤いランプ。素人には何の役割があるかわからないけど……。
「あのランプのある壁は裏にわずかだが通れる隙間があるが、高さが足りないからおまえの身長すべては隠しきれない。いいか、必ず身体を低くして通れ。途中で背の低い灌木があるが、途切れる時だけ一気に走れ。後は林に紛れるからそしたら玄関に逃げ込むんだ」
「……う、うん。でも、なんで」
どうにも納得できなくて一樹を見上げれば、彼の琥珀色の瞳は薄闇の中で輝いているようにも見えて。背中がぞくりとする。
「……余計なことは考えるな、と言ったはずだ」
ぴしゃりと言葉を遮った後、彼は二度と口出しするなと言いたげに突き放してきた。
「今から五秒数える。オレが先に出て奴らの注意を引き付けるから、その後にあのランプ目指して走れ」
ゆっくり立ち上がった一樹は、鋭い眼差しを闇に向ける。猛禽類のような――ハンターそのものの、張りつめた視線だった。
そして、彼のカウントダウンが始まる。
慌てて私は彼のジャケットに腕を通すと、フワリと香ったパフューム――になぜか安心感を得た。
(不思議……すごく落ち着く。まるで抱きしめられてるみたい)
ぎゅっ、とジャケットを掴むとカウントダウンが終わった。
「走れ!」
「!」
一樹が先に飛び出して、一拍遅れてからダッシュで走り出した。