ダブル王子さまにはご注意を!
「小百合さんには今日はこれを」
夏樹はお母さんに紙袋を渡す。それはどう見ても、一流ブランドのもので。
「ま、まあ……これは最近流行ってるネックレス……こ、こんなお高いもの。とてもいただけませんわ」
母よ、夏樹と話すとき声が1オクターブほど高くなるのはなぜ?
「いえ、将来のお母様になられるお方ですから。それにそれほど高価ではありませんし、普段使いできるものを選びました。小百合さんの名前通りに匂うような艶っぽさが引き立つと思いまして」
夏樹が完璧な営業スマイルで歯の浮くようなセリフを口にする。すると、お母さんは紙袋を返そうか迷っているらしいけど。
その前に、夏樹はネックレスを手にしてお母さんの首に掛けてしまったし。
「やはり、とてもお似合いです。あなたの美しさにはとてもかないませんが」
「ま、まぁ……」
(うお~い、砂を吐いていいですかあ)
50近い母ちゃんとその息子くらいの男の、こんな甘ったるいやり取り。鳥肌が立ってむず痒くなるわ。
けど、コイツの手慣れたこんな手管には私は騙されやしないからね! と改めて決意をして夏樹を睨み付けた。
「お母さんに用なら済んだでしょ? ならもう帰って」
「これ、真由理。せっかく来てくださったのになんですか」
(あ~あ……見事にイケメン好きなお母さんの籠絡に成功してるわね)
明らかに夏樹を気に入って味方する単純な母に、ため息をつきたくなった。