ダブル王子さまにはご注意を!
「ボクと一緒に住みませんか?」
「……は?」
おかしいな。今あり得ないことが聞こえた気がする。自分の世界に入り込むあまりに、空耳が聞こえたかもしれない。
「えっと……本日はご来店ありがとうございました。またのお越しを……」
「真由理さん」
何とかこの場を離れようとしどろもどろに挨拶をすれば、お客さま……幸村(こうむら)さんから笑顔で名前を呼ばれたけど。どうしてか、ぞわっと背筋が寒くなった。
「僕は話の途中ですからね。お客の話を最後まで聞かないのは店員としてどうでしょうか?」
暗に今日の売り上げがポシャって良いのか? という脅しを含んだ幸村さんの無言の圧力に、早々に尻尾を巻くしかありませんでした……。
「も、申し訳ありません……あのでも。私が住む……とは? 何の必要があって」
「実はね、僕。昔この辺りに住んでたことがあるらしいんだ」
「はあ……」
唐突に始まった幸村さんの自分語り。ひとまず黙って聞こうと口をつぐんだ。