ダブル王子さまにはご注意を!







聞き慣れた声は郁美のもので、もう一人は知らない男性だ。

特別室周りの個室にはちょうど患者がいない。だから、油断して会話をしていたんだろうけど……。


「なんだか穏やかな話に聞こえないけど……」

「そうでしょうね」


マリエラさんは様子を窺いながら、小声で返してきた。


「あの声は紛れもなく郁美さんのお父様である達郎(たつろう)さんのものです。彼はA社の社長をされてらっしゃいますが……」


そこまで話してから言いよどむ。なんだか気になってしまうではないですか。


「A社なら私も知ってる。けど、確かに大きな企業ではあるけど……そこの社長ってそんなに年収高いのかなあ?」


ネットの記事だと会社役員で何億円も報酬を得る話は珍しくないけど、それはあくまでも超がつく一流企業のトップの話。A社は業界二番手だけど、何だかそれにそぐわない派手なCMを流したり各種スポンサーになってたりする。社長もCMやバラエティに顔出ししたりして目立ちたがりやって揶揄されてたっけ。


業界一番手の会社がかなり堅実な経営をしてるのとかなり対照的だ。


そこで、ふと思い出したことがあった。


「あれ……でも、なんか最近。A社の商品でいくつかのリコール出てなかったっけ?何十万台の製品を回収して修理しなきゃいけないとか……」


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